産後のむくみの原因とは?解消法や気を付けるべき浮腫について【医師監修】
- 2024年12月7日
- 更新日: 2024年12月10日
- 医療コラム
出産後に起こるむくみは、多くのママに現れる症状です。「これまでに経験したことのないような浮腫」「足がゾウさんみたになった」など、産後の変化にびっくりすることもよくあります。
今回は産後のむくみについて、原因だけではなく解消法についてもお伝えします。また、病気が隠れているかもしれない、気を付けるべき浮腫のケースについてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
1.産後のむくみとは
産後のむくみは、多くの女性が出産後に経験する一般的な症状です。このむくみは、体内に余分な水分がたまることによって引き起こされます。また産後に体重が増える「産後太り」とは異なります。
1)むくみやすい部位(好発部位)と症状
むくみは、体の一部分に現れる場合と全身に現れる場合があります。また、むくみによるリンパ腺の圧迫で、しびれを引き起こすこともあります。
足
産後のむくみの好発部位として、多くのママが足のむくみを経験します。
症状としては「足首がなくなり、ゾウのようになる」「足の甲、足のすねに指の跡(圧痕)が残る」「靴が入らなくなる、歩きづらくなる」「靴下の跡がくっきりつく、しばらく消えない」などです。
顔
顔がパンパンになり、まぶたが腫れぼったくなったり、重さを感じたりすることがあります。洗顔するときにも違和感を感じるようです。
手
指が曲げにくくなったり、今まで入っていた指輪が入らなくなったりすることがあります。特に朝起きた際に、手のむくみを強く感じる方が多いようです。
2.産後のむくみとの原因とは
産後のむくみはさまざま要因で引き起こされます。また、妊娠中のむくみの原因とは異なります。ここでは主に4つの原因を説明します。
1) 女性ホルモンの変化
妊娠中に分泌されていたエストロゲンという女性ホルモンは、体内の水分や塩分を溜め込みやすくなります。そのため、妊娠中もむくみやすくなっていますが、産後は、これらのホルモンが急激に減少するため、体内の水分バランスが崩れ、余分な水分が組織に溜まりやすくなることにより、むくみが生じてしまうのです。
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2) 体内の血液・水分量の変化
妊娠中のママの体は、赤ちゃんに栄養や酸素を送るために血液量が約1.5倍に増えています1)。出産後は羊水の排出や出血により水分が失われるため、体内の水分不足を補おうとして、水分を溜め込む状態になりやすくなります。その結果、冷えや代謝の低下を引き起こし、溜め込まれた水分がむくみとして現れることがあるのです。
3) 疲労やストレス
産後の疲労やストレスは、自律神経系のバランスを乱し、体内の水分バランスの調節がうまくいかなくなるためむくみが起きやすくなります。また、昼夜問わない授乳や育児による睡眠不足、身体的・精神的な疲労が蓄積されやすい状態が続くことで、交感神経が優位になり、血管が収縮して血液やリンパ液の循環が悪化することもむくみの原因となるのです。
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4)運動不足
産後は、出産による疲労回復や傷の治癒のため、活動が制限されます。また、同じ姿勢で長時間いることも多くなります。そのため、運動不足の状態になり、筋肉の収縮運動が減少することで、血液やリンパ液の循環が滞りやすくなります。特に、下半身の筋肉は「第二の心臓」と呼ばれ、その収縮運動によって血液やリンパ液を心臓に戻す重要な役割を果たしています。運動不足によりこの働きが低下すると、体の末端に水分が溜まりやすくなり、むくみの原因となります。
3.産後のむくみはいつからいつまで?いつ治る?
産後のむくみは、個人差がありますが、一般的には産後数日でみられ2)産後1週間~2週間でピークを迎えたあとは徐々に引いていきます。多くは産後1カ月までにおさまり、長くても産後2〜3ヶ月には落ち着いてきます。
また、帝王切開のママは手術中に使用した輸液により水分がより蓄えれやすい状態です。
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4.産後の足のむくみの対処法・解消法
産後とくにつらい「足のむくみ」の対処法・解消法をご紹介します。
1) 足を高くして休む
横になる際には足をクッションなどで高くすることで、重力によって足に溜まった血液やリンパ液が心臓に戻りやすくなり、むくみの解消を促します。足の疲労回復にも効果的で、長時間の立ち仕事や育児で疲れた足をリフレッシュすることができます。
2) 下肢のマッサージ
ふくらはぎをやさしく包み込み、両手を交互に使いながら足首から膝にかけてマッサージを行いましょう。滞ったリンパ液の流れを促進し老廃物の排出を助け、むくみ解消につながります。ただし、強い力で摩擦するようなマッサージは逆効果となる可能性があるので、優しく行うように心がけましょう。
3) 着圧ソックスを履く
着圧ソックスは、足首からふくらはぎ、太ももにかけて段階的に圧力がかかるように設計されており、この圧力によって静脈の血流を促進し心臓へ血液を戻しやすくします。その結果、足のむくみを軽減する効果が期待できます。ただし、使用時には圧迫感に注意し、適切なサイズを選ぶことが重要です。
4) 塩分制限とカリウム摂取
塩分を控えめにし、カリウムを多く含む食品(バナナやほうれん草など)を摂取することで、水分バランスを整える助けになります。
塩分(ナトリウム)は水分を体内に留める性質があります。過剰摂取すると、体内の水分バランスが崩れ、むくみの原因となります。そのため、塩分制限は余分な水分貯留を防ぐ効果があります。
一方、カリウムには体内の余分なナトリウムを排出する働きがあります。また、細胞内外の水分バランスを整える効果もあります。カリウムを適切に摂取することで、ナトリウムと水分の排出が促進され、むくみの解消につながります。
これら二つの対策を組み合わせることで、より効果的にむくみを改善できるでしょう。
4.気を付けるべき産後のむくみとは
産後のむくみは通常一過性ですが、長引く場合や全身的なむくみが見られる場合は、周産期心筋症や心不全などの病気が隠れている可能性もあります3)。むくみがツライ場合や息苦しさがある場合も早めにかかりつけの医師に相談しましょう。
まとめ:産後のむくみはできる対処法で仲良くつきあおう
産後のむくみは、産後のママの不快症状のひとつです。しばらくすれば自然に治っていくものなので、できる対処法・解消法を取り入れながら少しでも楽に過ごすようにしていきましょう。とはいえ、浮腫の状況がどんどん悪化する、きつい、息苦しいなどある場合は、我慢はせずはやめに医師に相談してくださいね。
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出典
出典
1) 日本臨床麻酔学会 vol.38:妊婦の生理学
2) 仙台市立病院医誌:産褥期の下肢浮腫に対する実態調査
3)日本産科婦人科医会:分娩中・産褥期に起こり得る症状
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。